遺品整理士とは?民間資格と行政の許可の違い
遺品整理士とは何か
遺品整理士は、一般財団法人遺品整理士認定協会が認定する資格です。同協会は北海道千歳市に所在し、2011年11月に遺品整理士養成講座を開講しています。
資格を得るには認定試験の合格が必要で、協会は試験の内容を次のように説明しています。
- 法令を順守した廃棄物処理の知識
- その他、業務に関わるさまざまな法令
- 故人の遺品を扱うための心構え
つまり「廃棄物に関する法令の知識」と「遺族に寄り添う姿勢」を問う資格で、遺品整理という仕事に特化した内容になっています。協会は会員数について、2024年6月3日に60,000名を突破したと公表しています。
「遺品整理士」「遺品整理士認定協会」「遺品整理指導士」は、同協会の登録商標です。ただし「遺品整理士」と表示していることが、認定を受けている証明になるわけではありません。気になる場合は、協会が公開している推薦企業の一覧で確認するか、協会へ直接問い合わせるのが確実です。この一覧は誰でも閲覧でき、2026年8月時点で1,637社が会社名・所在地・電話番号とともに掲載されています。
なお受講料や会費の金額は、協会の公式サイトに掲載されていません。当サイトでは確認できない数字は書かない方針のため、費用については触れていません。取得を検討している方は協会へ直接お問い合わせください。
出典:一般財団法人遺品整理士認定協会(2026年8月時点で確認)
遺品整理士と行政の許可を1対1で比べる
ここがこのページの本題です。遺品整理士と行政の許可は、そもそも役割が違います。並べると違いがはっきりします。
| 比べる点 | 遺品整理士 | 一般廃棄物収集運搬業の許可 | 古物商許可 |
|---|---|---|---|
| 種別 | 民間の認定資格 | 行政の許可 | 行政の許可 |
| 出すのは誰か | 一般財団法人遺品整理士認定協会 | 市町村 | 都道府県公安委員会 |
| 無くても仕事ができるか | できる(必須ではない) | できない。無許可で家庭のごみを運ぶと違法 | できない。買取をするなら必要 |
| 家庭の遺品を運べるか | これだけでは運べない | 運べる | 運べない(買取のための許可) |
| 買取ができるか | これだけではできない | できない | できる |
| 読み取れること | 遺品の扱いを学んでいる目印 | 廃棄物を適法に運べる | 中古品の売買を適法に行える |
表の4行目がいちばん大事な点です。遺品整理士の資格は、廃棄物を運ぶ権限を与えるものではありません。家庭から出た遺品を廃棄物として運び出すには、市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
環境省も、家庭から出る廃棄物の回収には市区町村の許可が必要であり、「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できないと案内しています。
混同されやすいのが産業廃棄物収集運搬業の許可です。これは事業活動に伴って生じた廃棄物のための許可で、環境省は「工場や企業の廃棄物を処理するための許可」と説明しています。家庭の遺品には対応しません。許可の見分け方は 業者の選び方 に整理しています。
出典:廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!(環境省)/古物営業法(e-Gov法令検索)(2026年8月時点で確認)
なぜ民間資格が生まれたのか
「法的な資格でないなら、なぜあるのか」と思うかもしれません。理由は、この業界に業種としての法整備がほとんどないからです。
これは外部の指摘ではなく、協会自身が公式サイトで述べていることです。協会は「現時点では、遺品整理業に関する法整備がほとんど整っていないこともあり、不要品を不法投棄したり、不当に高額な料金を請求するような業者も少なからず存在します」と説明し、業界の健全育成をはかるために養成講座と認定試験を実施していると設立の趣旨を記しています。
つまり構図はこうです。
- 「遺品整理業」という業種そのものに、参入を規制する免許制度がない——だから誰でも名乗れる
- ただしやる作業(廃棄物の運搬・中古品の買取)には、それぞれ行政の許可が必要
- その間を埋めるものとして民間の認定資格がある
だから「遺品整理士だから安心」でも「民間資格だから意味がない」でもありません。行政の許可が最低条件で、民間資格はそこに乗る付加情報——この順番で理解するのが実務的です。
「遺品整理士在籍」をどう読むか
業者のサイトでよく見る表記です。読み方を整理します。
| 表記 | 読み取れること | 読み取れないこと |
|---|---|---|
| 遺品整理士が在籍 | 協会の認定を受けた人がいる | その人が実際に自分の現場に来るか。会社に1名いるだけの場合もある |
| 遺品整理士が対応 | 作業者が認定を受けている想定 | 当日の担当者が誰かは別途確認が必要 |
| 協会認定 | 協会との関係がある | 行政の許可の有無は分からない |
実際の運用例として、遺品整理業者の比較サイト「みんなの遺品整理」の掲載審査は、遺品整理士認定協会が実施していると協会が公表しています。協会によれば、登録には遺品整理士であることを条件に、遺品整理士や遺品整理士が所属している法人を審査しているとのことです。こうしたサイト経由なら一定の基準は通っていることになりますが、それでも許可の確認と相見積もりは別途必要です(みんなの遺品整理の仕組みと注意点)。
出典:一般財団法人遺品整理士認定協会(2026年8月時点で確認)
確認する順番——許可が先、資格が後
業者に問い合わせるとき、聞く順番を決めておくと迷いません。
- 1. 一般廃棄物の許可はどの市のものか——自社で持たず許可業者に委託する形もあります。その場合は委託先を答えられるかを確認します
- 2. 買取をするなら古物商許可があるか——「買い取ります」と言う業者には必要です
- 3. 見積書は項目別か——人件費・車両費・処分費の区別と、追加料金の条件を書面で
- 4. 遺品整理士など資格の有無——ここは最後です。1〜3が満たされていない業者は、資格があっても候補から外します
逆の順番で聞くと、資格の話で安心してしまい、許可の確認が抜けます。資格は「同じ条件の業者が並んだときの決め手」として使うのが適切です。
見積書のどこを見るかは 業者の選び方、実際に起きているトラブルは トラブル事例と相談先 にまとめています。
関連する民間資格
遺品整理の周辺には、ほかにも民間団体が認定する資格があります。いずれも法令に基づく資格ではありません。
| 資格 | 認定する団体 | 扱う領域 |
|---|---|---|
| 遺品整理士 | 一般財団法人遺品整理士認定協会 | 遺品整理の実務と廃棄物関連の法令 |
| 事件現場特殊清掃士 | 一般社団法人事件現場特殊清掃センター | 事件・事故現場の特殊清掃 |
| 化学物質安全管理者 | 同センター(2026年4月9日開始) | 清掃現場で使う薬剤の安全管理 |
なお「遺品整理指導士」も同協会の登録商標ですが、協会の公式サイトでは登録商標としての記載のみで、認定の要件や講座の説明は見つかりませんでした。当サイトでは確認できない内容は書かない方針のため、ここでは名称の存在のみをお伝えします。
事件現場特殊清掃センターは、遺品整理士認定協会が「関連団体」として紹介している一般社団法人です。孤独死の現場など特殊清掃を伴うケースでは、こうした資格を掲げる業者もあります。ただし特殊清掃についても、法令上の必須資格ではありません。費用の考え方は 特殊清掃の費用相場 を参照してください。
出典:一般社団法人 事件現場特殊清掃センター/一般財団法人遺品整理士認定協会(2026年8月時点で確認)
よくある質問
Q. 遺品整理士は国家資格ですか?
A. いいえ。一般財団法人遺品整理士認定協会が認定する民間の資格です。法律で定められた資格ではないため、これがなければ遺品整理の仕事ができない、というものではありません。
Q. 遺品整理士がいる業者なら安心して任せられますか?
A. 遺品の扱いを学んでいる目印にはなりますが、それだけでは判断できません。家庭から出た遺品を廃棄物として運び出すには市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要で、資格はその代わりになりません。許可の確認を先に行ってください。
Q. 遺品整理士がいない業者は避けるべきですか?
A. 資格の有無だけで除外する必要はありません。必須の資格ではないため、許可を持ち、見積書が項目別で、追加料金の条件が明確な業者であれば候補になります。判断の順番は「許可 → 見積書 → 資格」です。
Q. 遺品整理士の資格を取るにはいくらかかりますか?
A. 受講料や会費の金額は協会の公式サイトに掲載されていないため、当サイトでは記載していません。協会へ直接お問い合わせください。取得には認定試験の合格が必要で、試験では廃棄物処理に関する法令の知識と、遺品を扱う心構えが問われます。
Q. 「遺品整理士」と名乗れば誰でもいいのですか?
A. 「遺品整理士」は協会の登録商標です。ただし、サイトに「遺品整理士」と書いてあることが、認定を受けている証明になるわけではありません。確認したい場合は、協会が公開している推薦企業の一覧(登録1,637社・2026年8月時点)に載っているか見るか、協会へ直接問い合わせてください。また資格そのものは業務の必須要件ではないため、名称の有無と、適法に営業できるかは別の話です。
このページは遺品整理士認定協会・事件現場特殊清掃センターの公式サイトと、環境省・e-Gov法令検索の公表情報から作成しています。費用など公式に確認できなかった項目は、推測で埋めずに記載を控えました。制度や運営内容は変わることがあるため、最新は各出典でご確認ください。